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浅田彰の講演聞いてきた


金沢美大の美大祭で見かけた浅田彰氏の公開講義行ってきました。

満員の教室の中で精力的に2時間超も息もつかずにしゃべりっぱなし。

学生以来、使っていない筋肉をおおいに鍛えることができました。 せっかくなのでレポートも残してみます。

テーマは「ポストモダン文化の現在」

だったんですが、内容はモダニズムに対する熱い思いと、他はどうでもいいって感じでした。

講演の前半は、資本家vs労働者という大きな物語の終わり〜ポストモダン文化の歴史を早足でおさらい。

古典主義からモダニズムについて、東大寺の大仏殿(リビルドの大仏より台座が良いらしい)、日常を神話になぞらえて新しいもので古典を越えようとしたジョイス、シーグラム・ビルと川村記念美術館のロスコの作品、ジョン・ケージの「4分33秒」を例に説明。

その後はスライドで個別の作品を見ながら、近代建築を主に薀蓄を語るという流れでした。

広島平和記念公園

広島平和記念公園 - Wikipedia

コルビジェ、ミース・ファン・デル・ローエと来て丹下健三の話。

ピロティで地面から離してあるとか、コルビジェ以来の原則に則ってる近代建築。 そういうのが岡本太郎に「弥生的」とか言われて弥生vs縄文論争が起きる。 公園の外にある原爆ドームに軸が向いている、幻になったイサム・ノグチの門の話とか、映画「ヒロシマ・モナムール」にホテルとしてちょこっと映るとか小ネタも。

「素晴らしい建築。ブリリアントですね!」という表現が個人的にツボった。

国立代々木競技場

国立代々木競技場 - Wikipedia

(嫁のせいで)商業主義に陥る以前、丹下健三の最後の傑作。 「情報の場所としての役割が重要」というファサードのない建築は、半分以上、磯崎新の発想。

新国立競技場

国立競技場 - Wikipedia

計画が頓挫した香港のクラブのコンペで、磯崎新に見出されたのが新国立競技場のザハ・ハディド氏。 スポーツ担当側(森喜朗)からの影響で建築費が青天井化、デザイン側は悪くない。 一度コンペで決定した外国人を世論でなかったことにして置いて、審査で落ちた日本人デザイナーをゼネコンつながりで選ぶ一部始終がひどい。 上述の、戦後お金もない頃にできた国立代々木競技場との比較して情けない。

大阪万博の太陽の塔と大屋根

大屋根 (大阪万博) - Wikipedia

モダニズム建築の大屋根を土偶が突き破ってるのが象徴的(大屋根は万博の規定で元の場所には残っていない)。 目は原発の電力で光っている。 正面は原子力の明るい面、背中は闇を表すとされるが、聞いてみたら「背中側は意図せずあとから必要になって、付け足したもの」。

万博後の磯崎新

わざと意味を持たないよう、部分部分が不協和音を奏でるように設えたつくばセンタービル、横尾忠則の陶板画との合作を紹介。

現代

情報資本主義の上に成り立つ多文化主義。 聞こえはいいけど、メジャーな美術館での展示とオークションでつけられた価格によって価値が決められてしまう芸術品。

おもしろければなんでもいいというつまらない時代。 そういうことは一回やっただけで充分なのに、ずっとこの流れが続いててうんざり。江戸時代から続いてる。 若冲が最近になって発見されたなんて言い方する人がいるけど、若冲も琳派も昔からメジャー。 面白くなくても良い、というモダニズムの精神はどこへ行ったのか?

金沢。鼓門と21世紀美術館

21世紀美術館は、開会式に来て「予算がもっと少ないか多かったら、もっと面白い建物になったのに」と建築家ユニットのSANAAに言って困惑させた。 「批判するわけじゃないけど、意味が無い」ということを繰り返し。鼓門は「醜悪」。

質問コーナー

3人から質問が出てたけど忘れました…。

  1. 情報資本主義について〜

  2. 梅原龍三郎のチャイナドレスの絵は、日本の洋画のひとつの形を得たもの。 日本の洋画が海外、大東亜共栄圏で実を結んだのが興味深い。

  3. どうやったらマイノリティが団結できるか?お互いの意見のすり合わせが難しい。当事者意識のバランス。 お互い理解できないという前提を認めて対話を続けるのが大事。

みたいな感じだった。

感想

本を読むより聞く方がわかりやすい。講演、オススメです。