Nintendo Switch(ニンテンドー・スイッチ)のダウンロード販売専用インディーソフト『Earthlock(アースロック)』のプレイ感想レビュー記事です(スイッチだけなくSteam、PS4でも発売されています)。
カジュアルゲーマーお断り!評判を見ると難易度の高さばかりが目を引く、一見、コアなJRPGファン向けのカルト的な作品ですが、細かいシステム面に目を向けると「安全装置を万全にした上で、なるべく難しい問題に立ち向かわせよう」とする制作者の良心も垣間見える、決して「JRPGクローン」だけでは終わらない、独自の魅力を備えたRPGです。
ゲーム紹介、ストーリーあらすじ
Nintendo Switch『Earthlock』トレーラー
『Earythlock』のストーリーは主人公である「異種族の父をもつ、スカベンジャー(廃品回収業者)の若者」が、仲間のトラブル解決に奔走することに始まり、やがて世界の運命を変えて行く、壮大な全3部作の最初のストーリー。
海外RPGの翻訳作品で、開発当初、制作者は8人くらいの小規模なチームだったそう。開発会社のある国は『Owlboy』や『WORLD TO THE WEST』と同じノルウェーで、全体に漂うもの悲しい雰囲気や、ゲーム内のゆるやかな時間の流れがなんとなく共通している気がします。
『Earythlock』は「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」に代表される、安全な街で装備を整えて、敵のいる危険なフィールドを探索し、ターン制のコマンド選択式バトルシステムで戦う「90年代日本のJPRG(特にFF9)」への"オマージュ"作品。アビリティやタレント、「絆(きずな)」などの多彩な成長システムを駆使して、ストーリーや演出よりも、一見倒せなさそうな強敵を「攻略」するゲーム的な楽しさに振り切った作品です。ただのクローンに終わらず、JRPGからたくさんのエッセンスを取り入れながらも、独自に進化させている点にも注目です。
「スターウォーズ」や「ファイナルファンタジー」などの定番パターンをなぞった、ストーリーの展開自体は王道ファンタジーものです。自分は、ゲーム中に「日記」「図書館」などのサブテキストで語られる、架空の「自転が止まった世界」の読み応え満点の物語が好きで、もっと読みたいくらいでした。現在、第2部の制作もスタートしたそうで、今後の展開を楽しさを予感させる世界観になっています。
ゲームシステムをざっくり紹介
『Earthlock』の基本システムは、街で情報収拾しつつ物語を進め、装備を整え、モンスターの現れるフィールドを抜けて、進行する多くのロールプレイングゲームと同じ。ただし敵はフィールド上に目に見えているので、要所要所で待ち構える強力なボスキャラの存在を除いては、戦いたくないザコ敵を避けて通ることができます。
またダンジョン部分はパズルアクション的なテイストも強かったりします。
長距離の移動はワープが使え、ダッシュできるキャラも居るので移動はとてもスムーズです。
成長システム
ゲームシステムは多岐にわたり、成長システムをざっと一覧化しただけでもこれだけあります。強力すぎる敵を、ユーザー自身が見つけた方法で攻略する、歯ごたえのあるバトルが楽しめるRPGに仕上がっています。
- アビリティ
- タレント
- ペアと絆
- 武器、アイテムのクラフト
- 園芸
- 宝探し等のサブクエスト
『Earthlock』のプレイヤーはレベルに応じて高くなる攻撃力や防御力、速度、魔法、魔法防御、HPといった基本ステータスに加えて「タレント」と呼ばれる、4x5マスのカスタマイズ可能なスキルツリーを保有。
カスタマイズ可能なタレントは3種類。基本ステータスを上昇させる「ステータス」、キャラ固有のアクションを追加する「アビリティ」、装備品のように交換可能な特殊能力「パーク」のバリエーションがあります。
また「絆(キズナ)」システムという、日本の少年マンガ的な要素もあります(笑)。「絆」はペアごとに5段階あって、一緒に戦闘を繰り返すと「ステータス異常を無効にする」とか「ステータスを大幅に上昇させる」「アクションを早くする」といった、かなり強力な特殊能力が段階的にに解放されていきます。
アイテムはお店や宝箱、敵から盗んだりして手に入りますが、そうして手に入るアイテムの多くは「素材」そのものなので、銃や剣といった武器類は主人公の「アモン」がクラフトします。
回復アイテムや銃の弾丸といった消耗品は「グナート」が水をあげて育てた花から素材を得てクラフトします。
バトル
EarthlockのキモはJPRG(とくにFF9)へのオマージュ作品でありながら、ただのクローンに終わらず、JRPGからたくさんのエッセンスを取り入れながらも、独自に進化させている点にあります。
モンスターとの戦闘はJRPG特有のランダムエンカウント方式ではなく、「ロマンシング・サガ」のようにフィールド上に敵が見えていて、戦いたくないときは避けられるし、誤ってバトルに入ってもほぼ必ず逃げられます。当然、敵にぶつかれば戦闘がはじまりますが、フィールド上の複数の敵と同時に戦えるようになっていて、たくさんの敵を一度に倒すと受け取れる経験値も大幅にアップ。JRPG特有の「ザコ敵エンカウントの煩わしさ」や「レベル上げ作業の疲労感」をシステム上、上手に緩和しています。
戦闘が不要なときはステルス能力でバトルを避けられ、レベル上げが必要なときはオリアの口笛で敵を呼び寄せられるし、同時にたくさんの敵を倒せばもらえる経験値も高くなる。 ワープしたり、ダッシュできる仲間もいて移動も楽チン。 基本は難易度がそういったシステム上の”親心”に気づかないと、ただ谷底に突き落とされた理不尽さだけが記憶に残ってしまいます。
『Earthlock』の戦闘場面では「速度」ステータスが行動順を決定します。行動順は戦闘画面右側に一覧でき、速いキャラクターほど行動回数が多くなっているのが確認できます。速度を変えるアビリティを使えば、行動順も変化します。ドラクエのような全員平等に攻撃の回が回ってくるシステムではありません。
プレイした感想
「敵とは戦いたいときに戦うシステム」と「敵の数に応じた経験値ボーナス」の発明で、JRPGの問題に正面から向き合った作品。
JRPGのバトルの問題点をキチンと認識した上で、ひとつの解決策を示して居るのが好印象です。複雑な成長システムの陰になって、せっかくの魅力が伝わりにくく見えるのがムズ痒いゲームでもあります。
難易度はかなり高めですが、移動が快適で、全滅時のペナルティが少なく、リスポーン地点が配慮されていて、ただひたすら理不尽な無理ゲーという訳ではありません。
子供を谷底に突き落とす、ライオンの親心のようなものが見てとれる設計(それすら裏切られる場面もありますが 笑)。安全装置を万全にした上で、困難に立ち向かわせようとする、厳しいところが逆に親切な、近年では珍しい「ゲームらしいゲーム」となっています。
補足すると、難しいと感じる理由はおそらく、『Earthlock』が「なじみの薄い独自システムを備えた非メジャー作品」なためで、いったんシステムを理解すると「難易度」と「達成感」のバランスがとれた、攻略し甲斐のある楽しめる作品になります。
ただし、システムを理解するまでに10時間はかかるので(笑)、短気な人には向かないゲーム。新しいシステムに馴染んで適応する、21世紀的な知的サバイバル能力がある人なら楽しめるはずです。
社会の厳しさを教えたり、大きな目的を達成するために小さな地道に目標をこなすことや、新しいシステムを瞬時に理解して適応することを学ばせるなど、子供の情操教育に良いかもしれません。 いろんな種類の小石を積み上げて、気がついたら強くなって、以前は倒せなかった強敵が倒せるようになるゲームなので、情操教育によさそうです(笑)。
気になったところ
ふつうのRPGで強敵と遭遇すれば「ここはまだ来ちゃいけないんだ」と気づきますが、『Earthlock』はもともと敵が強いので(笑)、道に迷いやすく、ひとたび攻略ルートを間違うとひどいタイムロスになります。その辺の迷子や探索も楽しめるか否かが、Eartlockが人を選ぶ点。短気な人には向かないゲームです。
また、重要なアイテムがその辺に転がっていて、万が一アイテムやイベントを取りこぼしたりすると探し直すのは容易ではありません。 せっかくボス攻略のヒントも教えてくれるんですが、ボス攻略に必要なアイテムやタレントを含め、必要なアイテムがどこでどのようにして手には入るか、わかりづらかったりします。
翻訳面での不満は、グナートのアビリティ「治療」「回復」「再生」が字面だけでは区別できないので、いっそカタカナ英語のままにして欲しかったところ。
ちょっとした攻略
『Earthlock』の敵は工夫しなければ倒せませんが、とはいえ主人公たちのレベルが低ければそもそもどうしようもありません。
複数の敵を一度に倒すと経験値ボーナスがつく仕組みを有効活用すれば、効率的にレベルアップできます。
特に中盤で登場するトーナメントはレベル上げに絶好の場所。ボスが強くて進行に行き詰まったら、トーナメントでゴールドランクを取れるまで頑張りましょう。 オリアの口笛が便利です。
ボス戦の難しさ半端ないんですが、ボス戦の開戦前のキャラクターのセリフで、倒せるレベルに達しているかどうかがわかります。 敵に負けてもペナルティはなく、リセットせずにそのまま再開すれば、最寄りのセーブ地点でボスの倒し方のアドバイスが聞けます。
アイテムやサブクエストといったゲームシステムを理解するためには、メニューのチュートリアルを読む以外にも、プランペット島で新しい仲間に話しかけることが重要。 クリアに必要な所要時間はだいたい30〜40時間くらいのようです。
評価まとめ
#Earthlock #NintendoSwitch
— matagotch (@matagotch) 2018年3月20日
ただの高難易度JRPGクローンではなく、独自に改善した要素もあって自分的には面白かった。特に、JRPGの「雑魚敵エンカウント」と「レベル上げが面倒」問題をちゃんと認識した上で作ってあるのが好印象だった
『Earthlock』は欠点も多く、完璧な作品ではありませんが、個人的にはすごく面白かったRPGでした。 万人受けするかと言うと難易度が高く、プレイする人を選ぶ作品ですが、あらかじめ「一筋縄では行かないゲームだ」と知っていれば、ショックを受けずに済むと思います(笑)。
自分の場合、不思議なんですが、ディズニーの映画を見てても主人公がロボットとか動物が一番感情移入できて、次が人間、最後がデフォルメされたキャラクターという順になります。 プレステ時代のFF9をプレイしなかった理由が「キャラクターの等身」にあったので、いろんな種族が出てきて、キャラクターの体型がリアルな『Earthlock』は自分向きのゲームでした。 Nintendo Switchという新しいハードで「90年代JRPG」の可能性を見せてくれた、うれしい作品。3部作の序章ということで、はやくも次回作が待ち遠しい限りです。
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